[著者] 岡本健氏
[おすすめ度] ★★☆☆☆
[読みやすさ] ★★☆☆☆
[知識習得] ★★★★★
[ひとこと]
書評の読者を本が好きな普通の人とすると、初めに注意点としてこの本は「論文」であります。切り口にセンスを感じて軽い気持ちで手を出しましたが、これは准教授の博士論文を書籍にした税込み3000円以上する代物でした。笑
幸い文章も論文にしては読みやすくテーマも面白かったので頑張れましたが皆様はそれを踏まえてご検討下さい。
さて、本書は社会の諸問題、主にコミュニケーションやアイデンティティの変化によって生じた問題、再帰的近代化によって生じた両義的な他社との出会いに関する問題、公共性の問題、の3つに対して、観光が解決策を生み出せるか、その場合はどのような手段かを研究しています。
本書の構成は論文らしく問題の定義や分析手法などもきちんとしていて学生には勉強になるはずです。
その一見堅苦しい構造ですが、テーマは非常に身近であり、アニメはらき☆すたやけいおん、大河ドラマなり戦国無双などのゲーム、SNSも当然対象としながら、この「聖地巡礼」を分析しています。アニメやコミュニティなどは徹底して調査されており、オタクを可視化、体系化している点は面白味すら感じました。
また、例えば「インティメイト・ストレンジャー」という、他人と同じ匿名性を持ちながら、顔見知りよりも親密性が高い現代社会を象徴する区分など、社会学の知識も同時に習得できます。
本書から得た概念の中でも「聖地に関するデータベース」は非常に興味深く、巡礼者側と提供側の双方がデータベースを拡張させていき、さらにグッズやイベントなど経済圏も広がっていく仕組みは頭が整理されました。
そして、主題である他者性と社会問題についても、人が居場所を見つけ、価値観を共有し、他者と交流を深めていくことを可能にするのは、観光というきっかけが島宇宙的なコミュニティを作り出す構造にあり、これはアニメに留まらないことも分かりました。
一部の方々が本能的にも求め、それ故偏見を持ちがちな「聖地巡礼」について、本書は非常にプラスの側面で再定義されたと思います。
※詳細は画像より
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著者:ひさなお
TOEIC満点、作家、投資家、IT企業グローバル人事、馬券師。
慶應義塾大学→UCLA→大手IT企業。
第3回マイナビ作品コンテスト最優秀賞受賞。
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